入れ歯が問題を起こす要因は多く存在します。
今回はいくつかパートに分けてお話しさせていただきます。
例えば、コップに水を張ってガラス板で持ち上げてみましょう。
コップが表面張力で持ち上がることをご存知ですしょうか?
入れ歯は、この表面張力で上顎についているのです。
表面張力で持ち上がるコップは、周囲に空気が入ると落ちますね。
入れ歯も同じなのです。
入れ歯の周囲に『表面張力』ができるためには…を考えてみましょう。
a.表面張力が得られるために密閉するある程度の大きさ、範囲が必要
b.空気が入るのは、傾いたりすることなので、傾きにくい正しい噛み合わせがポイント
c.表面張力を得られるためには水分(湿ること)、お口の中では、唾液の分泌が必要です
入れ歯の型取りと精度、空気に入りにくい最低限の大きさを
(小さくすることに限度があるのです)
噛み合わせの位置の修正、噛み合わせがズレている場合は、正しい咬みかたのリハビリテーションを (リハビリは、時間を必要とします)
唾液の分泌の促進
多くの薬を飲んでいると唾液が出にくくなるので、薬の見直しや基本的な全身管理を再確認してみましょう
一般的にはアルジネートという印象材のみで行う(精度60%)
精密なシリコン印象材と個人トレーを用いて行う+咬座印象を行う
(残念ながら保険は効きません)
歯を失って噛み合わせがズレていくには長いクセの問題によって起こります。
ズレてしまった噛み合わせの修正には同じくらい時間がかかるのです。
癖の修正に似ています。一番最初に失う歯はどこが多いかご存知ですか?
“下の奥歯が多いのです”
下の前歯なのです。
“下の前歯”、“上下の犬歯”を失うと入れ歯だけでなく、口腔内の状況も難しい方向へ進むのです。
下の前歯が残ることで、下顎が前に行きやすくなり、顎が回転して、上顎の前歯を突くのです。それで上の前歯が、前に押され、入れ歯であれば上の入れ歯がストンっと落ちていくのです。
(例えると、志村けんさんの“アイーン”です)
どのような過程を経て、ご自身の歯がなくなってしまったか…
これを知ることは今後入れ歯を作る上では非常に重要なのです。
下の前歯だけが残っている場合は非常に困難が予想されます。
そのためには、治療用の入れ歯を作り、噛み合わせの面を整え、お口のリハビリを行っていきましょう。
総入れ歯であれば、噛み合わせの位置のズレが考えられます。
保険の入れ歯はレジンという材質でできています。一番使う歯もプラスティックなのです。
レジンは非常に柔らかく毎日食事で使用するだけでも2年くらいで、溝が無くなりツルツルな歯になっていきます。
奥歯が擦れてなくなってくると、前述したように下の前歯が上顎を突っついてきて、入れ歯がガタガタし、落ちてきます。
それを解決するには、しっかり奥歯で噛めている入れ歯を使うことが必要です。
(よくガタガタすると、歯茎が痩せたと言いますが…それは違います)
保険であればいつ作ったか!? 2-3年で作り変える必要があることを知ってください。
保険外であれば、骨格や筋肉に応じた歯を選択し、それでも状況に応じて人工歯の交換を行うこともあります。言い換えればクルマのタイヤと同じですね。
部分入れ歯であれば、“レスト”と言ってボッチみたいな部分の破損が起こるので都度確認が必要です。金属疲労で裂けてしまうこともあります。
入れ歯が食い込む、沈むなどあればここの破損を疑いましょう。
保険であれば、その部分の作り直しを第一選択に、不可能であれば入れ歯を新しくします。保険外の入れ歯であれば壊れることは少ないですが、壊れた場合には預かり修理で対応できます。
部分入れ歯は、歯にバネがかかることで少しでもお口の中に止まっていますが、総入れ歯はそうはいきません。
総入れ歯は、頬の筋肉、舌の力、唇の力のバランスの中で落ち着いているのです。
そのバランスを保つためには、筋肉を使っていないと不均衡が起こるのです。
今まで、あっていない、噛めていない入れ歯で長い期間使用していると筋肉は落ち、不均衡のままでいるのです。そう言った場合には、不均衡を是正した入れ歯(治療用の入れ歯)を作り、リハビリを行っていくのです。このリハビリはとても重要です。
同様に食事中に入れ歯が滑ったりする方もです。
入れ歯が滑るのは、片減りになっていることが多く、片減りの入れ歯で噛むことで滑るのが理由です。
同じように、治療用の入れ歯を作って、癖の改善を行って行きましょう。
これは非常に難しい問題です。
総入れ歯を小さくすることは、コップの理論(表面張力)からすると入れ歯を落ちやすくすることになるのです。
また、上顎では、真ん中を薄くすることは可能ですが、周囲のヘリを小さく薄くすることは、筋肉を支えるバランスからすると落ちやすくなるのです。
総入れ歯を小さくすることは非常に限られているのです。
上顎なら、口蓋の部分
下顎なら、筋肉の動く範囲まで
保険外の入れ歯を作ったとしても、小さくするというよりも、強度と薄くすることで、味や感覚を良くすることが中心になります。
本当に小さくするには、インプラントを用いるほかありません。
部分入れ歯であれば、多くの方法で入れ歯を小さくすることは可能です。
保険では、バネを使うことが条件ですが、保険外では歯の条件によりますが、アタッチメント、磁石、コーヌスなどの方法をとることが可能です。
また残っている歯とインプラントを組み合わせることでもっと小さくすることもできます。
入れ歯からの脱出には、幾つかの問題があります。
入れ歯になったまでの過程には『時間をかけて歯を失った』経緯があります。
虫歯、歯周病。決して良い環境とは言えない状態で歯を失っているのです。
まず、第一に環境改善が必要です。
環境改善後は、ブリッジ、インプラント状況に応じて可能です。
そもそも、ブリッジやインプラント、入れ歯とかの話でなく、入れ歯になった理由はなんだかということです。どのように失ったか、失ったことへの改善意志が重要です。
最も重要です。
それに続く大事なことをお伝えします。
噛み合わせ(咬合平面)を揃えることです。
多くの方が、歯を失って入れ歯を作り、また失って入れ歯を作り、そもそもどこが本当の位置なのかがわからないのです。その状態で入れ歯を作っても、あうはずがありません。
ここで1つ問題が、国民健康保険では、虫歯を詰める、歯周病の治療の一部、外傷 などは保険で治療できます。
保険で治療ができないものが、審美治療、歯並びや噛み合わせの位置を治す、歯周病治療の一部とインプラント、金銀パラジウム以外の健康に良い材料使う、等の治療です。
そもそも、本気で治療を行う最初の一歩に大きな壁があるのです。
(全ての歯を失っていると、入れ歯で咬合平面を揃えられるので保険でできます)
噛み合わせの平面を揃えるには、位置の変わった歯を抜歯することもあります
一つ目は、入れ歯になると自分の歯と比べて力が 1⁄6 〜 1⁄10 になるのです。
年齢と同じぐらい人は、噛むちからがあるのですが、入れ歯になるとその分、ちからが減るのです。
二つ目は、入れ歯が咬みきれない理由には、2-3年するとプラスティックの入れ歯の歯が擦れて無くなり平坦な噛み合わせとなります。
平らな歯のかみ合わせですとかみきれない大きな原因になります。
そして、ほとんどが気付かず使っています。
痛くないから。。。痛くなる時は、『顎が痛くなる』ときです。
噛み合わせが低くなってきた、その症状です!
すり減った入れ歯での解決は歯を交換することです。
交換出来るのは、保険外の入れ歯のみで、健康保険での入れ歯は新しく作り変えなければなりません。
できる限りの入れ歯を小さくすることはできますが、やはり限界があります。
この場合は特殊な方法ですが、残った歯を利用した、コーヌス義歯、もしくはインプラントを応用した入れ歯を検討してみましょう。
最後に費用の話を、入れ歯を作ることは健康保険で認められています。
残っている歯の数によって費用が違います。
バネのない入れ歯や、クッションが付いていてとても楽な入れ歯、金属を用いた匠の入れ歯、インプラントなどは保険では出来ません。
噛み合わせの平面を揃える治療も、診査診断で5万円。
その先に必要な費用は残っている歯や条件によって変わります。
入れ歯の“物”だけの費用ではないのです。
特殊な咬合器を使ってバランス調整も保険ではカバーしていません。
全てオーダーメイドになるのです。
上述した、噛み合わせの位置を整えるだけでもその先が開けてきます。
ここを変えない限り、もちろん変える必要のない方もいますが、状況は変わらず、毎回、毎回ただ入れ歯を作り変えるだけなのです。互いに哀しいままです。。。。。
ここまで本当に長文を読んでいただき感謝いたします。
入れ歯を作るということは、実は本当に大変で皆様の協力が必要であることを知っていただければと思います。
現在、私は『前歯で咬める入れ歯をつくる』元顎咬合学会会長の河原先生と一部マスメディアの協力を得て啓蒙活動を行っています。
活動の一部はホームページにてアップしていますのでお時間あるときに見ていただけると幸いです。
吉田歯科クリニック
院長
吉田 健